未来の世界について想像したことはありますか。空を飛べるスニーカーや立体ホログラム広告が並ぶ、便利でワクワクするテクノロジーに満ちた世界を思い浮かべるでしょうか。それとも、絶対的な支配者が職業からその日の食事まで管理する厳格な管理社会でしょうか。いずれにせよ、行き先の定まらない未来について思いを巡らすことは楽しいものです。

今回は、読書・作文講座『わくわく文庫』で取り扱っている作品のひとつ、19世紀にH・G・ウェルズが発表した小説『タイムマシン』を紹介します。

19世紀のイギリス。タイムトラベラーが自ら発明したタイムマシンで未来へと旅立ち、そこで見た光景や経験を仲間に語る──そんな物語です。

なかでも衝撃的なのが、描かれる未来人の姿です。タイムトラベラーが到達した約80万年後の世界では、人類は平和的で美しいエロイと、地下に暮らしエロイを捕食するモーロックという二つの種族へと分岐しています。「未来」と聞くと、私たちはさらに賢くなり文明も発展していると考えがちです。

しかし、本作に登場する人類はその期待に反します。エロイは知性をすっかり失い、火の存在すら知らず、脅威であるモーロックに怯えるばかりで戦おうとしません。モーロックもまた、もはや必要性を理解しないまま、習慣として道具を作り続けています。  タイムトラベラーは、これを「階級制度と技術進化の行き着いた果て」だと分析します。極端に固定化された階級制度は人間を二極化し、行き過ぎた技術の発達は知性を低下させ、自ら考える力を手放してしまったというのです。

便利な道具に囲まれた現代を生き、さらに発展した未来を担う子どもたちにとって、この作品は「道具との向き合い方」や「考えることをやめる」ことの危うさを見つめ直すきっかけとなるかもしれません。

『わくわく文庫』は、本文を朗読する音声を聞きながら対応する本の文字を目で追うカリキュラムです。ひとりで集中して読書をすることが苦手な子でも、耳から入る情報に誘導されて簡単に読み進めることができます。

興味、関心のある方はぜひお近くの開明とぴあ校舎にお問い合わせください。

わくわく文庫紹介「未来は本当に進化するのか?――H・G・ウェルズ『タイムマシン』を読む」

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